気づきと行動を繰り返して


「大学をやめて芸人になります」

 厳格な父に告げる時は、
 正直、ひるんだ。

 今となっては恥ずかしい話だけども、
 とにかく新しいやり方を試したくて、
 ベタなことはやりたくなかった。

 初舞台は所沢の市民ホール。
 無名の小さな事務所のライブだけど
 まあまあの来客だった。

 今まで見たこともないような、
 斬新なコントを披露した。

 結果はダダズベリで、
 帰りの電車は相方と二人、
 無言だった。

 2年間、生の舞台でひたすら学び、
 寒い思いを何度もしながら、
 ずいぶん時間がかかったけども、
 ある時、大事なことに気付く。

 ベタを意識した骨組みの構築は、
 何をやるにも必要不可欠なのだ。
 新しさは表現の部分だけでいい。

 修正に修正を重ねて、
 最後は爆笑をとった。
 そして満足して力尽きた。

 だいぶ道草を食ったけど、
 たまに過去の無謀だった自分にも
 感謝する。

 人生は気づきと行動の繰り返しで
 良くなると信じてまた前に進む。