こども歯磨き『グレープ味』の効き目

　夜の歯磨きの仕上げは、僕の担当だ。

　フッ素が入った子供用の歯磨き粉を

　そろそろ使い始めたほうがいいよと、

　歯医者さんからアドバイスを受けて、

　グレープ味のやつを導入したのです。

　フルーツが大好きの双子長男は、

　あんなに嫌いだった歯磨きを、

　進んでやるようになった。

　これは、すばらしい。

「うんまー、うんまー」

　まあ、磨いているというより、

　味わっているんだけども、

　いやいや磨くよりは、いいか。

　一方、フルーツが苦手な双子次男。

　グレープ味は、逆効果だった。

　嫌いな歯磨きが、もっと嫌いになってしまった。

　しょうがないので、歯磨き粉は付けずに、

　テレビを観せながら、背後からこっそり近寄る。

　昨夜は、その作戦もバレて、

　僕の気配を察すると、

　スルリと下に身をかわして、

　脱走した。

　ヤツは見かけよりも、

　はるかに素早い。

　さささっ

　あっという間に、ソファーの下へ。

　小動物か。

　隠れて、

　じっと、動かない。

　いや、

　ぜんぜん見えてるんだけど。

　フルーツよりも、炭水化物が大好きな

　双子次男に必要なのは、

　グレープ味ではなくて、

　焼きそば味。

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